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介護福祉士は やりがいのある仕事 チームケアを重視する老健で

介護福祉士は やりがいのある仕事 チームケアを重視する老健で
撮影◎池田昌康 (2007年8月31日公開)


「老健って何? 介護福祉士のやりがいってあるの?」

……そんなふうに思っている学生の方も多いかもしれません。

マスコミでは介護職が大変な状況ばかりを報道しますが、高齢化率20%を超える世界一の長寿国ニッポンで、高齢者ケアの専門職が必要でないわけがありません。
老健はこれまで、医師や看護職、リハビリの専門職とともに、介護福祉士を、チームケアの一員として考え、力を合わせて良質なケアを提供してきました。
老健は介護報酬切り下げで厳しい状況になっても、介護職の皆さんの処遇に最大限の配慮をしています。

老健は何よりも、皆さんのやる気と専門性を求めています。

ここでは、老健の全国組織である「全国老人保健施設協会(全老健)」会長の川合秀治さん、介護福祉士養成校の全国組織の「日本介護福祉士養成施設協会(介養協)」会長の小林光俊さんに、 老健の仕事や介護福祉士の重要性について語っていただきます。


介護福祉士はケアの専門家としての国家資格者である

川合秀治 全老健会長(以下、川合) 私は、介護福祉士は質の高い高齢者ケアを提供するために必要な専門職であると考えてきました。今もその考えに変わりはありません。  

一方で、私たち老健関係者も、介護福祉士の皆さんも、現在さまざまな困難な状況をかかえています。しかし、私たちが自らの仕事に誇りを持って高齢者ケアに取り組んでいかなければ、日本の将来はありません。そこで今日は、老健と介護福祉士が将来に明るい展望を持てるような話をしたいと思います。

小林光俊介養協会長(以下、小林) 介護福祉士制度ができてようやく20年になります。これまで私ども介護福祉士養成施設協会に所属している学校の卒業生の20%近くが、就職先として老健にお世話になっています。ですから、われわれ養成校としては当初から、老健は重要な就職先の一つという位置づけをしています。
そして老健の仕事は、介護福祉士にとって責任とやりがいのあるものだと認識しています。

介護福祉士が制度化された当初は、老健は福祉施設とは異なり、医師、看護職、PTやOTといったリハビリテーション専門職など、医療専門職が中心の施設というイメージがありました。ですから、われわれ学校関係者には、老健に介護福祉士が行っても単なる雑用しかできないのではないかという考えを持つ人もいました。

しかし、私や多くの人はそう考えませんでした。老健ではチームケアが実施されています。それぞれの専門職がお互いの職責を踏まえ、チームとして良質なサービスを対象者にご提供しておられる。だからこそ、介護福祉士も専門職の一人として、医師、OT、PTの皆さんと協力し、サービスを提供できるだろうと考えたのです。

川合 ご指摘のとおりですよ。老人保健施設制度は昭和63年にできました。介護福祉士制度とほぼ同じような歴史ということになります。
病院にはかつて「付添婦さん」がいました。付添婦さんは家政婦さんで、つまり、病院にはケアの専門職でない人が患者さんの世話をしていた暗い歴史がありました。それは平成8年、当時の厚生省が「付き添い廃止」を打ち出すまで続きました。  

私どもの法人は平成4年に老人保健施設をつくってから、介護福祉士の採用を積極的に行ってきました。その理由は、付添婦制度に疑問を持っていたこととあわせて、老健という医療とケアを専門職のチームで行う施設では、ケアの専門家が必要だと考えたからです。
ただ、制度発足当時は、介護福祉士である当の本人たちが専門職であることに自信を持っていませんでした。そのとき私が彼ら彼女らに言ったことは今でもよく覚えています。

「介護福祉士という資格は、10年、20年経ったら必ず専門職として貴重な戦力になる。あなたたちが新たな職場をつくっていくという信念をもって頑張ってほしい」と。
小林先生が指摘するように、介護福祉士は、医師や看護職、リハビリの専門職と同列の専門職です。プロなんです。それを私たち老健関係者はよくわかってきたつもりです。

小林 有難うございます。私は介護福祉士制度の創設時からかかわってきましたが、介護福祉士という国家資格制度の創設にあたって考えたのは、何とか社会で評価される専門職に育て上げていかなければいけないということです。

景気に左右されない制度設計が社会保障には必要

せっかく国家資格とするわけだから、自己の専門性にプライドを持ち、専念することができる専門職になっていかねばならない。そうでなければ単なるお手伝いさんとしての仕事でしかないし、それでは国家資格としての位置づけが萎えてしまいます。専門性を発揮し、生涯仕事に打ち込み、プライドを持っていいサービスを提供する。そのような専門職にしていかなければいけないということでした。

川合 老健や介護福祉士に対する2人の評価はほぼ同じといえそうですね。ただ、そういう立場からみると、現状には多くの問題があります。よく指摘されるのが待遇の話です。

先日、愛知県で私どもの全国大会を開催しました。全国大会では講演やシンポジウム、演題発表などさまざまな形式のプログラムを行ったのですが、介護現場における介護職の人材難について、厚生労働省の関係者が、「世の中の景気がよくなり、介護職の求人に苦労なさっていると聞く」とおっしゃった。

その発言を聞いて私は思わず、「景気がよくなったから、介護職の人たちが介護現場から離職して他の職業に就くという状況になることそのものがおかしい。
社会保障制度というものは、景気がよくなろうが悪かろうが、現場にどんどん人が来るような設計をしなければならないのではありませんか」と指摘をしました。それを聞いた会場の皆さんからは拍手が起こりました。現状のモチベーションのもちにくい、生活ができにくい環境を放置しているのはいかがなものかという思いは、老健関係者に共通のものです。

小林 おっしゃるとおりです。社会保障や社会福祉というものは、経済がよくなればよくなるだけその水準を上げていかなければいけません。そうしなければ社会の安定、国民の生活の安定は図れません。

経済成長をさせるために社会保障費を削るべきだという人がいます。それはまったくの間違いです。経済成長と社会保障、社会福祉は一体です。この点については、政治家の皆さん、行政に携わっている皆さんの考えを改めていただきたいと思います。

川合 私も同じ意見です。医療やケアの現場には、小泉内閣の掲げた「聖域なき構造改革」の負の側面が現れています。少子高齢化で社会保障に回す費用の余裕がないことはわかりますが、消費税の目的税化や、欧米で行われているようなタバコ税の引き上げなど、考えれば知恵が出ないものではないと思うのです。

小林 まさに国民は、そういう知恵を出してくれることを政治家や官僚の方に期待しているのではないでしょうか。財政の議論は必要かもしれませんが、だからといって、国民生活を犠牲にするというのでは、何のための経済成長かという話になります。経済成長でめざすことは国民生活をよくすることでしょう。それを忘れて、経済成長をするために社会保障を削るという考え方は本末転倒です。

老健は介護の仕事を評価するだから給料は下げない

小林 にもかかわらずそういう政策をとる。介護報酬は2度も切り下げられました。このようなことをされれば、老健をはじめとした介護保険事業者の方たちは、人件費を抑制せざるを得ない厳しい状況になってしまいます。

川合 それは数字でも明らかになっています。非常に残念なことですが、全体平均でみると、介護職の方の年間給与は10年前と比べて下がっています。  
ただ、われわれ介護保険の事業者がそ うせざるを得ない状況であることもまた事実です。  

しかし、私たち老健はそこをなんとかしたいと頑張っています。介護職の皆さんの給与を下げてしまっては、専門職としてのモチベーションも下がり、結局、質 の高いケアを提供することがむずかしくなるからです。
だから、老健では介護職の皆さんの給与を下げないようなんとか頑張っているのです。たしかに、現状の介護報酬では昇給は難しい。ただ給与は意地でも下げない。これは全老健の会員施設のデータで明らかになっています。

このことは、単なる待遇の話ではありません。老健がいかに介護労働というものに価値を置いているかということです。
老健はケアには専門性が必要であると強く考えているのです。

小林 私もそう思います。老健以外の多くの職場では、最初の卒業生の初任給と今の初任給を比べると今のほうが安い。
その点、老健は、厳しい経営環境にあっても、さまざまな努力をされ、介護福祉士などの処遇維持・改善に意を用いておられると感じます。

ただ、老健関係者の努力だけではこの状況を改善することは難しいと思います。ここでなんとか事態を改善するためにさまざまな取り組みを行う必要があると、私どもも考えているところです。

マイナス面のみとらえるマスコミ報道 介護福祉士はこれからもっと必要な存在

川合 私が問題に感じていることの一つが、最近のマスコミの介護職にまつわる報道のあり方です。あれではあまりにも暗すぎて、問題の解決にはつながりません。

小林 おっしゃるように、最近のマスコミは介護の現場について大変ネガティブな報道が多いですね。20年前制度が始まった時にも、一部にそういう報道がありましたが、そのころのマスコミには、新しい資格制度ができたからこれを何とか育てようとする気持ちもあったように思いますが、現在の報道はそうではありません。ネガティブな側面ばかりが強調されています。

たしかに問題提起としての側面は意義があります。しかし一方で、今まさに介護福祉士になろうと考えている若い人たちの意欲をそいでしまうという悪い面も非常に大きいのです。

川合 おっしゃるとおりです。これからの日本を考えたとき、介護の専門職がどれほど必要かは明らかです。意欲のある若い人たちに、介護の仕事にどんどん入ってきてもらわないと困ります。もちろん、せっかく介護の職に就いた人がやめてしまう状況もどこかで断ち切らなければなりません。  
特に、介護福祉士という、介護のプロの国家資格者はこれからの日本に必要不可欠なのです。

小林 有難うございます。そういう風に理解していただけると私たちも心強く思います。  
介護福祉士を養成する側からみると、老健は、施設ケアだけでなく、在宅ケアを支援する多機能な施設です。専門職も医師や看護職、リハビリなど幅広い。ですから、介護福祉士も専門職としてチームケアの実践で学ぶことが大きい。また、経営も安定しているので就職先としても心強い。介護福祉士の専門性を発揮できる場だと思います。

川合 老健はケアプランをいち早く取り入れ、チームケアを実践してきました。
私は医師ですが、老健は病院と違って、医師を絶対的なトップとする組織ではありません。介護職をはじめ、看護職、リハビリテーションの専門職、支援相談員といった相談業務の専門家など、利用される高齢者の生活をよりよくするために、あらゆる分野の専門職が一体となってケアを提供する組織です。いまでこそ、医療の世界でもチームケアということがよくいわれるようになりましたが、老健はそれをずっと以前から、言葉でなく実践してきたのです。

なぜ介護職が重要か。それは365日24時間、利用者の方のそばにいるのは介護職の方だからです。その介護職が高齢者ケアにとって重要でないわけがないじゃないですか。

小林 そのとおりです。しかし、その当たり前のことがなかなか理解されないのが非常に残念です。また、それによって介護福祉士の専門性への理解が乏しくなってしまっているのです。

全老健と介養協が協力しよりレベルの高い介護をめざす

川合 私たち老健と介護福祉士の養成施設は、就職だけでなく、実習などでももっと密接にかかわることができると思います。

小林 私は介護福祉士の学校をはじめて20年が経ちました。これまでは、就職先や実習先としての関係でしたが、これからはもっと違った分野でも連携できないかと考えているのです。  

その一つが、ケアの研究開発です。私は以前から、医科大学の附属病院のように、自前で実習施設を持ち、ケアの研究開発ができないかと考えているのです。
介護福祉士の専門性を高めるには、臨床現場でのアプローチを研究に結びつけることが必要です。介護福祉士の養成については、その専門性の強化の観点からも法改正がなされることとなりましたが、私はそれに加えて、さらに研究事業にも積極的に取り組むべきだと考えています。介護福祉士の専門性を、自ら高めていくためにもそれは欠かせません。

ただ、それには私たちの努力だけでは実現が難しい部分もあります。そういう部分については、老健やその全国組織である全老健にご協力いただきたいのです。

川合 老健ができることがあれば喜んでご協力します。
高齢者の医療とケアは切り離せないもので、そこには、まだまだ取り組むべき課題が多くあります。そこで私たち全老健は、これまでにさまざまな調査研究事業を行ってきました。そのなかにはケアのあり方や技術に関するものも非常に多くあります。
ですから、小林先生のおっしゃるような共同研究も可能です。ぜひ一緒に取り組んでみましょう。

小林 介護福祉士になりたいと考えている人や資格取得者のなかには、よりレベルアップを図りたいと考えている人が多くいます。そういった向上心をもった人がレベルアップできる環境整備をぜひすすめていきたいと考えています。 

そして、そういう環境を整備することで、介護技術はまだまだ進歩できると思いますし、それが介護福祉士の社会的地位の向上にもつながっていくはずです。
今度の法改正で「専門介護福祉士」の検討が謳われています。また、専門職としてステップアップしていく方策の検討も指摘されています。これらのことを早期に実現していきたいと思います。

川合 研修事業は全老健の得意分野です。新人研修はもちろん、現任研修や専門分野ごとの研修も盛んです。そこでもぜひ参加していただければと思います。

小林 現場のそういう取り組みとともに、大学や研究機関での研究事業を促進し、これからますます必要となる認知症ケアなどの専門分野を切り拓いていきたいと思います。いまはまだほとんどいませんが、近い将来には、研究職としての介護福祉士も実現していかなければならないと考えているのです。

川合 これからのケアには専門知識が欠かせません。全老健では、現場だけでなく、外部の学識経験者の方にも協力いただいてさまざまな調査研究を行っていますので、そういう小林先生のプランへの協力もできるはずです。

小林 介護福祉士が国家資格化されて20年になりますが、この20年間は介護福祉士という国家資格にとって草創期といえるのだと思います。この期間で世の中に認知されることができました。しかし、これからは専門職として本当の実力を構築していかなければなりません。
その取り組みの中で、より社会に必要とされる、より専門性の高い、より希望を持てる国家資格者としての地位を実現していきたいと思います。

川合 介護福祉士の皆さんは、老健の中でも、現場の貴重な戦力として、それぞれの施設のリーダーとして、活躍しておられる。私はその人たちにも、これから資格をめざす人にも大いに期待しています。

お互いに協力して、わが国の介護の質の向上に寄与できればと思いますし、老健は、介護福祉士の皆さんが希望が持てる職場でありつづけたいと思います。
介護福祉士をめざす人たちが、この記事を読んで老健に少しでも関心を持ってくれたらうれしいと思いますし、わからないことや聞きたいことがあれば、気軽に老健に問い合わせてほしいと思います。 今日はどうも有難うございました。

(役職等は2007年8月31日公開時点のものです)