ケアプランQ&A - 包括的自立支援プログラムの活用法 –|公益社団法人 全国老人保健施設協会
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ケアプランQ&A - 包括的自立支援プログラムの活用法 –

回答:木田 修(全老健ケアマネジメント検討委員長)
(機関誌『老健』平成13年3月号より)

※編集部注:
ここでいう「ケアプラン」は、利用者の状態をアセスメントし、その人が今持っている能力を生かして何をどう改善すればその目標を達成できるか、といったケアの構築プランをさします。

有効期間について

Q1:なぜケアプランが必要なのでしょうか?
老健施設では介護保険が始まる以前から、看護・介護計画(ケアプラン)の策定が 「入所者基本施設療養費(Ⅱ)」として診療報酬上、評価されてきました。
介護保険に移行後、すべての介護保険施設においてケアプランの作成が義務づけられましたが、なぜ、ケアプランが必要なのでしょうか。

A:従来、私たちは、医師・看護職・リハビリスタッフなどが治療計画・治療方針をそれぞれに立てて、高齢者のケアにあたってきました。
しかし、同じ病状や状態像の高齢者に、まったく同じ計画が立てられるわけではありません。
それは、高齢者自身の生活歴や人生観・居住環境・家族の介護力などが一人ひとり異なっているからです。
すなわち、障害を抱えた高齢者自身の問題とそれを取り巻く社会背景すべてを考慮に入れなければ、本当に効果的な計画はできません。
このような計画は、単に医師のみが、あるいは看護婦のみが、一人の力で作成できるものではありません。
高齢者のケアにかかわるすべてのスタッフが、それぞれの情報を持ち寄り、協議してはじめて達成されるものです。
ケアプラン作成の意義はまさにこの点にあり、介護保険ではこれを制度として取り入れたものといえます。
また、介護保険では、利用者の自由な意思によるサービスの選択を保証することを理念の一つとしています。
したがって、ケアプラン作成においては、利用者や家族の意向を十分に反映させることが大切です。
利用者や家族の希望、および専門職の視点から見た問題点を総合的に判断し、カンファレンスの場で、解決すべき課題や目標について合意形成することが必要です。
Q2:合意を形成するためのポイントは?
利用者との合意を形成しながらケアプランを立案する際、もっとも必要となることは何でしょうか。

A:ひと言でいえば「分かりやすさ」です。
先ほどもお話ししたように、ケアプランは、われわれ職員と利用者や家族とのいわば"共同作業"によって作成されるものです。だとすれば、専門家にしか理解できないような手法では"共同作業"は不可能です。
包括的自立支援プログラムは、「実際に提供されているケアの見直し」という独特の切り口から、解決すべき課題を発見しプランを作成していきます。
この方法は、職員にとって分かりやすいだけでなく、利用者や家族にとっても大変理解しやすい手法です。
実際に包括的自立支援プログラムでケアプランを作成している方々から、利用者や家族のニーズを発掘しやすく、分かりやすい手法だという感想をたくさんいただいています。
そもそもケアプランは、われわれ職員の「業務計画」ではありますが、介護保険制度においては、利用者との「契約書」という側面も持っています。
ですから、利用者にもよく理解できるような、具体的で、実行可能なプランでなければなりません。
包括的自立支援プログラムを開発するにあたっては、この点を最も重視してきました。
Q3:現在、ケアプランはケアプラン本来の目的を果たしているでしょうか?
介護保険が開始されてまもなく1年が経過しようとしています。はたしてケアプランは有効に機能しているのでしょうか。

A:まず、ケアプランそのものが立案できているかどうかについていえば、老健施設は介護保険導入前からケアプラン作成を行ってきた実績があるので、施設サービス計画については、ほとんどの施設で立案できているのではないかと思います。
しかし、居宅サービス計画に関しては、残念ながら不完全なものが非常に多いようです。介護支援専門員(ケアマネジャー)がサービスの調整や給付管理に忙殺され、ケアプランを作成する余裕がないのが実態のようです。
ケアプランを作成することによって、利用者自身がどんなサービスを受けられるのかがはっきりと目に見えるようになり、また職員も利用者の立場に立ってケアの方向性を考え実践するようになってきました。
これは確かにケアプランの成果といえるでしょう。
具体的にサービス計画書の書式に当てはめていうならば、「短期目標」については、実行可能で、優先されるべき課題が正しく設定されるようになったことの現れだと思います。
しかし、「長期目標」の設定についてはどうでしょうか。短期目標に比べて、長期目標は抽象的であいまいな目標が多いように感じます。
たとえば、入所の時点で、在宅復帰が実現できそうだと思われる利用者のケアプランでは、長期目標の設定は比較的容易で明確です。
ところが、実際には将来の方向性が定まっていない方が多く、どこまで機能が回復すれば家族の介護力で支えられるのか、あるいはどの程度の社会資源を投入すれば在宅復帰が可能なのかの判断は大変むずかしいものです。
利用者へのケアだけでなく、家族指導や社会資源の調整など大変なエネルギーを要しますが、その努力なくしては長期目標の設定は不可能だと思います。
つまり、ケアプランが本当に有効に機能するかどうかは、長期目標の設定にかかっているのではないかと私は考えています。
老健施設においても長期入所者がしだいに増えてきていますし、介護保険が開始されてから、残念ながらその傾向が助長されているように聞いています。
それには様々な要因がありますので簡単には論じられませんが、もしその対策の一つとしてケアプランを生かすならば、長期目標の設定にあるのではないでしょうか。
Q4:包括的自立支援プログラムの特徴は何ですか?
多くの高齢者ケアの現場で「包括的自立支援プログラム」がケアプラン作成ツールとして活用されています。
具体的に包括的自立支援プログラムでケアの課題がどうやって導き出されるのか、そのしくみと特徴を教えてください。

A:包括的自立支援プログラムの最大の特徴は、要介護認定に用いる認定調査票と連動していることです。
ケアの現状を見直すために、ケアチェック表というものを考案しましたが、これは日常の業務を細かく分解して整理しなおしたもので、要介護認定の仕組みの元になった1分間タイムスタディのケアコード表です。
この表を用いて、個々のケア内容について、利用者や家族の希望を考慮に入れながら、サービス提供機関と家族のケアの現状を調査し、その妥当性を検討していくのです。
実際に提供されているケア内容を分析するというやり方では、提供されていないケアについては検討が加えられないのではないかという懸念があるかもしれません。
認定調査票による状態像のアセスメントや、利用者・家族の希望などを勘案すれば、実際にはそのようなことはないと思いますが、この点を補完するために「参考値」が呈示できるようになっています。
「参考値」とは、認定調査票によるアセスメント結果から、提供される可能性が高いと統計学的に推定されるケア項目のことです。
現状で提供されていないケアであっても、もしこの「参考値」が示されれば検討の対象となりますので、このような不安は解消されるでしょう。
そのほかにも、ケアチェック表には様々な工夫が凝らされています。詳細については、ぜひテキストをご覧いただきたいと思いますが、ケアチェック表に正しく記載されれば、それを転記するだけでケアプラン表(サービス計画書)が完成するようになっています。
つまり、包括的自立支援プログラムは、一連の流れにしたがえば自動的にケアプラン表が完成するように設計されていますので、まさにケアプランを作成するための手法だと信じています。
Q5:「参考値」はどうやって算出されるのですか?
「参考値」が算出されるコンピュータソフトがリリースされたと聞いています。
この「参考値」はどうやって算出されるのですか。

A:包括的自立支援プログラムの最大の特徴は、要介護認定の認定調査票と直接連動していることですが、これまではそれがあまり明確ではありませんでした。認定調査票とケアチェック表は、ともに1分間タイムスタディから生まれたものですので、実際には連動しているのですが、表面的にはその関係がみえませんでした。
今回、「参考値」を提供できるシステムが完成したことで、ようやく目に見える形で、認定調査票とケアチェック表が連動しました。
これまでの研修会などで、「参考値が呈示できるようにいたします」と、ずっと申し上げてきましたので、その約束が果たせてほっとしています。
この「参考値」は、老健施設入所者約1,600例を対象に調査した結果から得られたもので、認定調査票の基本調査項目をコンピュータに入力することで、提供される可能性が高いと統計学的に推定されるケアの中項目(*)を自動的に算出できるものです。
つまり、「このような状態像の利用者には、標準的にはこのようなケアが発生する可 能性が高いですよ」というデータが示されるわけです。このデータをケアプランを作成する際のヒントとして活用していただきたいと思います。
このコンピュータソフトに関しては一応の検証作業は済ませており、ほぼ満足できる的中率だと考えています。
しかし、精度管理については、私たちケアマネジメント検討委員会の責任において継続的に検証していきます。
その意味においても、「参考値」を算出するためのシステムは全老健独自のものとして、全老健が作成するコンピュータソフトでのみ提供することになっています。
(*) ケアの中項目
ケアチェック表の構成は、大分類として、①食事・水分摂取等に関するケア、②排泄に関するケア、③入浴・清拭等に関するケア、④洗面、口腔清潔・整容・更衣に関するケア、⑤基本動作介助・リハビリテーション等に関するケア、⑥医療・健康に関するケア、⑦心理・社会面等に関するケア――の7枚のケアチェック表にまとめたケア項目を、さらに中分類、小分類に分けて作られている。
この小分類は、ケア内容を最も細かく分類したもので、1分間タイムスタディによって作成されたトータルケアコードそのものである。
参考値は、このなかの中分類に相当する項目に対して表示されるようになっている。